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(まあ、当然の結果だな)
県警本部内、指揮本部室。モニターには上空を飛ぶ県警ヘリコプターから撮影された、尾頭橋近くの「現場」の様子が映し出されていた。
「この作戦を立てたのは誰だ!」
「あらかじめ部隊を集中させれば勝てたものを!」
(生態が判らない相手に、分の悪い賭けなんか出来ないさ)
責任を取らされることが決定的になった成瀬は、しかし自分に割り当てられた席に座り事実を淡々と受け止める。元々機動隊に守れる訳がない(当然、装備面を検討してである)と割りきっていたからで、先の対策を考えていた。
「巨大ウナギ群側の支配領域は?」
県警幹部に割り込んで成瀬は質問する。
「そんなことより──」
「『そんなこと』ですよ、今やるのは」
皮肉めいた口調で言ったので、幹部陣は二の句を次ぐことが出来ない。
「データ持ってるのは何処? 無いなら、ヘリ使って調べて」
「おい、ヘリを回せ」
「──『あゆち』、名古屋港方面に飛んでくれ」
『了解』
呼び出されていた地域部通信指令課の係員が指示し、画面が名古屋港に向かって動き出す。熱田神宮、新堀川との合流地点付近まで飛び、
「第二波は神宮付近と──ああ、ここが勢力範囲か」
水面・地表面構わず、黒い影がまばらに覆っていた。堀川水面から西、国道一号線より南側に広がっている。
「西は、中川運河までか?」
ヘリは二本の水路の中間地点に移動して、ガーデン埠頭を望む角度となっていた。黒い影は現在、ガーデン埠頭の西側を通る中川運河より西には確認できない。
「ありがとう、大体把握出来たよ」
成瀬は通信指令課係員を見ながら礼を言い、そのまま続ける。
「追加で確認してほしい。堀川の導水状況と、あと天気予報も」
「天気予報? 何の関係がある」
皮肉めいた口調で言うのは警備部長だけで、後の幹部は黙っている。
「そろそろ雨が降りそうな雲行きなので」
「雨だからって何の問題がある?」
「大有りですよ」
成瀬は言い切った。
「相手は上陸出来るとはいえ、水棲生物です。堀川の水門も閉めてますし、内水氾濫でも起きたら圧倒的優位を取られますから」
「で、どうすると?」
「別に、どうしようもないですね。出水地域に留まって、かえって被害を抑えられるかも」
「……下手したら裁判沙汰だぞ」
「解ってますよ」
「あのー、すみませんー」
二人の会話に、地域部から出向していた警察官が割り込む。
「──何でしょうか?」
成瀬は律儀に尋ねた。
「気象台への回線が込み合っててー、予報が確認できないんですー。ネットもー、ダメですー」
警備部長はその口調に、イラッときている。さすがに怒りをぶつけはしないが。
「なら、テレビで確認して」
「テレビですかー? 今は災害情報ばかりでー、天気予報なんてやってませんよー」
確かに、テレビ放送は災害報道一色に染まっていた。だが、成瀬はそれも念頭に入れている。だから、切り返した。
「──県警本部にも地デジテレビぐらいあるよな?」
「完全地デジ化ー、大分前だからー、全部対応してますー」
「なら、データ放送で確認できる。dボタンを押して、リモコンの四方向ボタンで選べばいいんだ。すぐに確かめてこい」
「わかりましたー」
弱者切り捨てと揶揄されたテレビ放送の完全デジタル化だったが、当然メリットも大きかった。一番の理由は放送周波数の圧縮。次に挙げられるのがテレビの進化で、高画質放送と共にデータ放送で情報を自由に取り出せる点など。災害報道も進化した。データ放送での情報提供が進められ、マルチチャンネル化によりメインチャンネルで災害報道を実施しつつサブチャンネルで通常番組を放送する局も出始めていた(ただし機械に不慣れだったり、ワンセグを受信したりしている視聴者からの批判をかわすため、災害報道終了後再放送を実施する編成方針ではあったが)。
「──さて、どうしようかな」
成瀬は立ち上がった。
県警本部内、指揮本部室。モニターには上空を飛ぶ県警ヘリコプターから撮影された、尾頭橋近くの「現場」の様子が映し出されていた。
「この作戦を立てたのは誰だ!」
「あらかじめ部隊を集中させれば勝てたものを!」
(生態が判らない相手に、分の悪い賭けなんか出来ないさ)
責任を取らされることが決定的になった成瀬は、しかし自分に割り当てられた席に座り事実を淡々と受け止める。元々機動隊に守れる訳がない(当然、装備面を検討してである)と割りきっていたからで、先の対策を考えていた。
「巨大ウナギ群側の支配領域は?」
県警幹部に割り込んで成瀬は質問する。
「そんなことより──」
「『そんなこと』ですよ、今やるのは」
皮肉めいた口調で言ったので、幹部陣は二の句を次ぐことが出来ない。
「データ持ってるのは何処? 無いなら、ヘリ使って調べて」
「おい、ヘリを回せ」
「──『あゆち』、名古屋港方面に飛んでくれ」
『了解』
呼び出されていた地域部通信指令課の係員が指示し、画面が名古屋港に向かって動き出す。熱田神宮、新堀川との合流地点付近まで飛び、
「第二波は神宮付近と──ああ、ここが勢力範囲か」
水面・地表面構わず、黒い影がまばらに覆っていた。堀川水面から西、国道一号線より南側に広がっている。
「西は、中川運河までか?」
ヘリは二本の水路の中間地点に移動して、ガーデン埠頭を望む角度となっていた。黒い影は現在、ガーデン埠頭の西側を通る中川運河より西には確認できない。
「ありがとう、大体把握出来たよ」
成瀬は通信指令課係員を見ながら礼を言い、そのまま続ける。
「追加で確認してほしい。堀川の導水状況と、あと天気予報も」
「天気予報? 何の関係がある」
皮肉めいた口調で言うのは警備部長だけで、後の幹部は黙っている。
「そろそろ雨が降りそうな雲行きなので」
「雨だからって何の問題がある?」
「大有りですよ」
成瀬は言い切った。
「相手は上陸出来るとはいえ、水棲生物です。堀川の水門も閉めてますし、内水氾濫でも起きたら圧倒的優位を取られますから」
「で、どうすると?」
「別に、どうしようもないですね。出水地域に留まって、かえって被害を抑えられるかも」
「……下手したら裁判沙汰だぞ」
「解ってますよ」
「あのー、すみませんー」
二人の会話に、地域部から出向していた警察官が割り込む。
「──何でしょうか?」
成瀬は律儀に尋ねた。
「気象台への回線が込み合っててー、予報が確認できないんですー。ネットもー、ダメですー」
警備部長はその口調に、イラッときている。さすがに怒りをぶつけはしないが。
「なら、テレビで確認して」
「テレビですかー? 今は災害情報ばかりでー、天気予報なんてやってませんよー」
確かに、テレビ放送は災害報道一色に染まっていた。だが、成瀬はそれも念頭に入れている。だから、切り返した。
「──県警本部にも地デジテレビぐらいあるよな?」
「完全地デジ化ー、大分前だからー、全部対応してますー」
「なら、データ放送で確認できる。dボタンを押して、リモコンの四方向ボタンで選べばいいんだ。すぐに確かめてこい」
「わかりましたー」
弱者切り捨てと揶揄されたテレビ放送の完全デジタル化だったが、当然メリットも大きかった。一番の理由は放送周波数の圧縮。次に挙げられるのがテレビの進化で、高画質放送と共にデータ放送で情報を自由に取り出せる点など。災害報道も進化した。データ放送での情報提供が進められ、マルチチャンネル化によりメインチャンネルで災害報道を実施しつつサブチャンネルで通常番組を放送する局も出始めていた(ただし機械に不慣れだったり、ワンセグを受信したりしている視聴者からの批判をかわすため、災害報道終了後再放送を実施する編成方針ではあったが)。
「──さて、どうしようかな」
成瀬は立ち上がった。
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プロフィール
HN:
愛知川香良洲
HP:
性別:
非公開
職業:
今年も、予備校生……
趣味:
小説を読む、書く。
自己紹介:
小説を書くのと勉強に忙しい予備校生。アニメやライトノベルが大好き。「今年は受かってるかなぁ? あれ、番号、ない……」と言う訳で2011年も予備校生のまま。ケータイを無くしたので更新も停止中。
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